始業してすぐメールとチャットに返事をしていたら、大事な資料に手をつける前に昼になっていた。 仕事のやる気が出ない日の多くは、気持ちの弱さより、頭を使う仕事を置く時間と中断の扱い方に原因があると、多くの仕事術や心理学の本が説明しています。 ここでいう頭を使う仕事は、企画書や資料の中身を考える、問題の原因を調べるなど、考えないと進まない仕事のことです。 このページでは、メールを開く前にいちばん頭を使う仕事から始め、それでも気持ちが乗らないときは原因を確かめて対処を替えることを勧めます。
結論
始業したら、メールやチャットを開く前に、今日いちばん頭を使う仕事を1つ紙に書き、通知を切って25分だけその仕事をします。 それでも気持ちが乗らないなら、やる気の量より、仕事の進め方のどこかに原因があります。 下の問いで原因を確かめて、合う対処に替えます。
原因を確かめる
仕事術や心理学の本が挙げる原因は、大きく次の5つに分けられます。 1つ目は、結論の25分で対処できます。 それでも気持ちが乗らないなら、2つ目から下を確かめます。 どの問いも、「はい」と答えたら、その原因が当てはまります。
| 原因 | 当てはまるかを確かめる問い |
|---|---|
| 頭を使う仕事を後に回している | 今日、いちばん頭を使う仕事より先に、メールやチャットを開いたか |
| 中断が多い | 今日、通知や声かけで手が止まり、1つの仕事を25分続けられなかったか |
| 進んだ実感がない | 今日の予定に、終わりに「これが進んだ」と言える区切りが1つも無いか |
| 仕事の意味が見えない | 今の仕事をしている理由を聞かれたら、「お金のため」としか答えられないか |
| 同じことの繰り返しになっている | この1か月、前よりうまくできるようになった仕事が1つも思い浮かばないか |
いくつも当てはまるのは普通です。 当てはまったものから、1つずつ下の対処を試します。
手をつけること自体ができない、完璧に仕上げようとして手が止まる、という場合は、先延ばし癖の記事のほうが近いはずです。 資格試験の勉強のように、仕事のための勉強に気持ちが向かない場合は、勉強のやる気が出ないときのページを見てください。
気分の落ち込みや眠れない状態が長く続く、休んでも疲れが取れない、長時間労働が続いている、仕事に行くのがつらいなど、生活に支障が出ている場合は、このページの方法で乗り切ろうとせず、職場の産業医や相談窓口、医療機関に相談してください。
原因ごとの対処
頭を使う仕事を後に回しているなら、メールを開く前に始める
朝いちばんにメールを片づけていると、今日の大事な仕事を決める力が先に減ってしまいます。 脳の働きと仕事の関係を扱ったデイビッド・ロックの『最高の脳で働く方法』は、何から手をつけるかを決めるのは脳のエネルギーを特に多く使う作業で、10分ほどメールを処理しただけでその力が残らなくなることがある、と説明しています。 だから、メールより先に、今日いちばん頭を使う仕事を1つ選んで紙に書きます。 候補を頭の中だけで比べるより、紙に書き出して選んだほうが、覚えておくための力を使わずに済むからです。
頭を使う仕事を、一日の疲れがたまる前に置く点は、多くの本で一致しています。 このページでは、その時間を始業直後の午前中とします。 多くの人にとって、起きてから数時間がたち、まだメールで頭を使っていない時間だからです。
その時間は、メールとチャットの通知を切り、タイマーを25分にして、紙に書いた仕事だけをします。 25分にするのは、ポモドーロテクニック(25分の作業と5分の休憩をくり返す時間の区切り方)の1回分で、気の重い日でも始められる長さだからです。 タイマーは、ブラウザで動くポモドーロタイマーを使ってもかまいません。
鳴った後も調子が出ていれば、5分休んでもう1回25分を続けます。 疲れてきた午後の遅い時間には、伝票の入力やファイルの整理のような、考えなくても進む仕事を回します。 在宅勤務で始業の切り替えがつかない人には、仕事にだけ使う机を決めるよう勧める本もあります。
中断が多くて進まないなら、その場で応じずに後に回す
後に回すのは、自分の仕事を止めてしまう中断です。 電話や窓口のように、すぐ応じること自体が仕事になっている職場では、午前の25分だけでも後に回せないかを、上司や同僚と相談するところから始めます。 仕事術の本『超・集中ハック』で伊庭正康が紹介している調査では、オフィスでは11分に1回の頻度で、話しかけられるかメールやチャットで手を止められるとされています。 しかも、中断の害は止められた時間だけで終わりません。
働き方の本で知られるカル・ニューポートは、著書で次の研究を紹介しています。 参加者に言葉のパズルを途中でやめさせ、履歴書を読んで採用を決める別の課題に移らせたところ、前のパズルに注意が強く残っている人ほど、採用の課題の成績が悪くなりました。 メールを数分おきにのぞくだけでも、すぐには片づかない用件を頭に抱えたまま、元の仕事に戻ることになります。
だから、中断は意志でこらえるより、後に回す先を決めておきます。 中断の種類ごとに、回し方は次の3つです。
- 自分で思い出した用事は、メモに書いて、今の仕事に戻ります。書くのは数秒で済ませ、25分の区切りが終わってから片づけます。
- 人から声をかけられたときは、今は手が離せないと伝え、「25分後に」「午後に」のように対応する時刻を約束します。約束した時刻には、自分から声をかけに行きます。
- メールとチャットは、見る時刻を先に決めておき、その決めた時刻以外は開きません。たとえば「11時と16時」のように決めます(この時刻はこのページの例です)。
声をかけられたときの返し方は、ポモドーロテクニックの項目にもまとめています。
進んだ実感がないなら、終業前に進んだことを書いて帰る
大きなプロジェクトを何人かで分けて進めていると、全体が見えず、自分がどこまで進んだのか分からなくなります。 上司や同僚からの反応が少ないと、実際には前に進んでいても、達成した感覚が得られません。
働く人のやる気を最も高めるのは仕事が前に進んだという実感だ、とする研究を、時間術や集中術の本が紹介しています。 望月俊孝の『本当の時間術』によれば、ハーバード・ビジネス・スクールのテレサ・アマビールらは、7つの企業の26チームに4か月間、毎日日誌を書いてもらい、1万件を超える日誌を調べました。 やる気を最も高めていたのは、昇給や昇進より、仕事が進んだという実感でした。 「最高の日だった」と書かれた日の日誌の76%に、何かが進んだという記述があったそうです。
だから、大きな仕事は、自分に見えている範囲で毎日の区切りに刻みます。 「今日はこの資料の構成を決める」のように、その日の終わりに「進んだ」と言える大きさにします。 終えた仕事はやることリストから消さず、印を付けて残しておくと、進み具合が目に見えます。
そして終業前に、今日進んだことを1行、明日の朝いちばんにやることを1行書いてから帰ります。 このページが1行ずつにするのは、疲れた終業前でも続けられる短さだからです。 次にやることが書いてあれば、翌朝はそこから迷わずに始められます。
仕事の意味が見えないなら、働く理由を書き出す
仕事をする理由をお金以外のところに見つけた人ほど仕事に満足しやすい点は、複数の本で一致しています。 経営大学院で教えるキャシー・ホームズが『「人生が充実する」時間のつかい方』で紹介している研究では、仕事の一番の目的を「お金を稼ぐこと」と答えた人は、仕事でも人生全体でも満足度が目立って低くなっていました。
学習法の本『Learn Better』でアーリック・ボーザーが紹介しているのは、病院の清掃員に話を聞いた研究です。 患者のために壁の絵を替えるなど、決められた仕事の外まで工夫していた人たちは、自分を病院に欠かせない一員だと考えていました。 そうした人は仕事への関わりが深く、生活全体の幸福感も高かったそうです。
これらの研究が示すのは、意味を感じている人ほど満足しているということで、意味の見つけ方までは示していません。 見つけ方としては、ホームズが同じ本で、答えに「なぜ」を重ねて問い直していく練習を勧めています。 書き出すときは、次の順に進めます。
- 「なぜ今の仕事をしているのか」を紙に書きます。最初は「お金のため」や、仕事の説明のような答えになるのが普通です。
- 出た答えに「それはなぜ大事か」と問い、答えをその下に書きます。ホームズは、5回ほど重ねることを勧めています。
- いちばん下に出てきた理由を、気の重い仕事に取りかかる前に読み返します。
任される範囲が狭く、言われたことをこなすだけに感じるなら、自分で選べる部分を探します。 自分で選べている感覚がやる気を支える点も、心理学や学習法の本で一致しています。 作業の順番、資料の組み立て、会議の日程のように、小さくても自分で決めた部分を思い出すだけで、負担が軽くなるとする本もあります。
同じことの繰り返しなら、今日の仕事で伸ばす点を1つ決める
同じ仕事を同じやり方でくり返していても、腕は上がりません。 上達の研究で知られる心理学者アンダース・エリクソンらの『超一流になるのは才能か努力か?』は、やり方を変えずに経験を重ねると、能力はむしろ止まり、少しずつ落ちていくと書いています。
そこで、ふだんの仕事をそのまま練習の場に変えます。 この本が紹介する例では、社内の会議で発表する人は「スライドに頼らずに話す」のように伸ばしたい点を1つ決めて臨み、聞く側はメモを取って、終わった後に気づいたことを伝えていました。
このページでは、その日の仕事に取りかかる前に、伸ばす点を1つ決めることを勧めます。 資料なら「結論を1枚目に書く」、電話なら「用件を最初の一文で言う」のように、終わった後にできたかどうかを確かめられる1点にします(この例は本ではなく、このページで考えたものです)。 仕上げた後は、詳しい同僚に一言見てもらいます。 上達には、自分のやり方への反応がすぐに返ってくることが欠かせないからです。
資料のレイアウトを少し変える、上手な人のやり方をまねるといった小さな工夫を足すだけでも、つまらない仕事に面白みが出るとする本もあります。
製品の仕様や社内の規程のように、仕事で覚える知識が多いなら、資料を閉じて何も見ずに書き出すアクティブリコールと、日をあけて思い出し直す分散学習が向いています。 仕事の本を読んで試したいことが見つかったら、読書ノートに添える1行に、明日の仕事でどう使うかを書いておくと、伸ばす点を決めやすくなります。
今日やること
- 今日いちばん頭を使う仕事を1つ選び、紙に書く。
- メールとチャットの通知を切り、タイマーを25分にして、その仕事だけをする。
- タイマーが鳴ったら、進んだことを1行書く。
終業前には、今日進んだことと、明日の朝いちばんにやることを1行ずつ書いてから帰ります。 明日の朝は、メールを開く前に、書いておいた1行から始めます。
よくある失敗
- 朝いちばんにメールやチャットを開き、大事な仕事を決める前に昼になる。
- 「ちょっと確認するだけ」と、数分おきにメールやチャットをのぞく。
- 頼まれごとをその場ですべて受け、自分の仕事を何度も止める。
- いちばん頭を使う仕事を、疲れのたまった夕方に残す。
- 大きなプロジェクトの完成だけを目標にして、毎日の「進んだ」が無いまま過ごす。
- 同じやり方を何年も続け、経験を積めば自然にうまくなると考える。
- 朝の25分ができなかった日に、そのままやめてしまう。翌朝また戻ればよく、休んだ後の戻り方は習慣化のページにまとめています。