教科書の1節を読み終えて「どんな話だった?」と聞かれると、細かい例は言えるのに、結局何が言いたかったのかが出てこない。 読解や勉強法の本の多くは、短く言えないうちは、まだ分かったつもりの段階だと書いています。 このページでは、1節を読んだら言いたいことの文を探し、例を外して自分の言葉で30字以内の1文に書き直し、元の文と見比べて抜けを直すやり方を勧めます。
ひとことで
要約は、読んだ文章の言いたいことだけを残し、例や説明を外して、自分の言葉で短く言い直すことです。 このページで扱うのは、教科書や本、記事を読んでまとめる要約です。 仕事の報告を短くまとめる話は扱いません。
なぜ効くか
短くしようとすると、どこが言いたいことでどこが例かを、自分で決めるしかなくなるからです。 ただ、要約なら何でも効くわけではありません。 効き目は、要約の出来で変わります。
30字に収めようとすると、残す1つを選ぶことになる
節の文章をそのまま写すだけなら、意味が分からなくても手は動きます。 30字に収めるには、残す1つを選び、残りを捨てる理由を考えなければなりません。 この選ぶ作業で理解が進むことは、読解の本も、研究を紹介する本も書いています。
1文で言えない節が、分かっていない節
読んだ直後は、全部分かったような気がします。 ところが1文で言おうとすると、言葉が出てこない節があります。 そこが、読んだのにまだ分かっていない所で、次に読み直す場所です。
効き目は、要点を押さえた要約かどうかで決まる
安川康介『科学的根拠に基づく最高の勉強法』は、要約についての研究を2つ紹介しています。 1つ目は高校生の研究です。 文章を要約した生徒と、自分の言葉で言い換えた生徒は、直後と1週間後のテストで、読むだけの生徒や書き写した生徒より上でした。
2つ目は、心理学を学ぶ大学生に、友だちに教えるつもりで要約させた研究です。 こちらは、要約させただけでは、普通に勉強した学生と比べて応用問題の点に差が出ませんでした。 差を分けたのは、要約の出来でした。3分の1以上の学生が大事な定義を書き落としていて、要点を押さえた要約を書いた学生ほど点が高かったといいます。
同じ本は、ダンロスキーらの研究者が学習法についての多くの研究をまとめて評価した報告書で、要約の有用性が低いとされていることも紹介しています。 要約がうまい人には役に立つものの、多くの人にはうまく要約する練習が要る、という評価です。 だから、このページの手順には、言いたいことの文の探し方と、元の文と見比べる確かめを入れています。
やり方
このページが勧めるのは、1節ごとに30字の1文を作って元の文と見比べ、章を読み終えたら節の1文をつないで140字にする流れです。
- 1節(見出し1つ分)を読み、言いたいことが書いてありそうな文に鉛筆で線を引く。 探すのは、最初と最後の段落、「しかし」「つまり」の後、見出しです。
- 例や体験談、数字、引用の所には線を引かない。 「たとえば」で始まる段落は、言いたいことを分かりやすくするための説明です。
- 線の文をもとに、自分の言葉で30字以内の1文に書き直し、ノートに書く。 理科の教科書の光合成の節なら、「植物は光を使い、水と二酸化炭素から養分を作る」のような1文です。著者が使うキーワードは残して構いません。
- 元の節と見比べ、抜けた主張と、本に無いことを足していないかを確かめて直す。 抜けていた所は、もう一度読む所です。
- 章を読み終えたら、節の1文を並べ、「だから」「しかし」でつないで140字にまとめる。 自分の意見や感想は、140字の下に分けて書きます。
最初は、今日読む教科書の1節だけで試します。
言いたいことの文が最初と最後に来やすいのは、書き手がこれから言うことを先に示し、最後にもう一度まとめることが多いからです。 「しかし」の後には、それまでの話を打ち消して、書き手の主張が出ることがよくあります。 長い段落でも、言いたいことは短いことがよくあります。長いのは、例や説明が多いからです。
1節の字数は本によって違いますが、このページでは30字以内にします。 節ごとに字数を決めている本が、そろって上限にしている長さだからです。 章のまとめも本によって140字と150字に分かれるので、短いほうの140字にします。
つなぐときは、節どうしの関係を考えます。 前の節が理由で次の節が結論なのか、前の節を次の節が打ち消しているのかで、つなぐ言葉が変わります。 並べただけでは、節の数だけの箇条書きにしかなりません。
要約は、本を開いたまま書きます。 佐々木京聖『東大理III スピード読書術』が紹介している研究では、本文を見ながら要約した人に比べ、読んで覚えてから見ずに要約した人の要約は評価が低く、本文に無い話が混じったり、大事な点が抜けたりしていました。 できた要約を覚えたいときは、翌日にその1文を見ずに言ってみます。こうして何も見ずに思い出す練習(アクティブリコール)は、別のページで詳しく扱っています。
うまくいかないとき
大事そうな文が2つあるときは、「1つだけ言うなら」で選ぶ
1つの節が2つのことを言っているように見えるときは、1つだけ言うならどちらかを考えます。 片方が「しかし」の後にあれば、そちらが言いたいことであることが多いです。
30字に収まらないときは、理由と例を削る
最初から30字に収まらなくても構いません。 字数を決めて要約するやり方を勧める本の著者にも、はじめは要約が苦手だったと書く人が何人もいます。 まず書いてから、「〜なので」の理由や、「〜など」の例を削ります。
線を引く文が見つからないときは、段落ごとに1文で言う
節が大きすぎるなら、段落に区切ります。 1つの段落が言いたいことは1つで、多くは段落の最初の文に出ています。 段落ごとに1文で言えたら、その文を並べて、節の1文を作ります。
段落の言いたいことがどうしても言えないときは、知らない言葉、特に抽象的な言葉の意味が分かっていないことが多い、とする本もあります。
本1冊が終わらないときは、知りたいことに関わる章だけにする
試験のための教科書は1節ずつ要約しますが、本1冊のすべての節を要約しようとすると、読む手が止まります。 読書術の本には、要約は自分が残したいことに関わる所だけでよい、とするものが複数あります。 目次で知りたいことに関わる章を選び、その章だけを要約します。章の選び方は速読のページで扱っています。
よくある失敗
- 本の文をそのまま写して、要約したつもりになる。写すだけなら、意味が分からなくても書けます。
- 例や体験談まで入れて、要約が元の文の半分ほどの長さになる。残すのは、言いたいことの1文です。
- 「〜で、〜し、〜なので」と、いくつもの内容を1文に詰め込む。1文に入れるのは1つだけです。
- 要約の途中に、自分の意見や感想を混ぜる。意見は、元の文を正しくまとめた後に、別の行に書きます。
- 書いたら終わりにして、元の文と見比べない。見比べて見つかった抜けが、次に読み直す所になります。