速読の講座に申し込み、目を左右に動かす練習を続けたのに、本を読む速さはほとんど変わらない。 速読の本と研究を紹介する本の多くが一致して言うのは、速く読める人は目を速く動かしているわけではなく、読む所を絞っているということです。 このページでは、読む前に知りたいことを1行書き、目次を2分読み、見出しと段落の最初の1文を拾って、答えがありそうな段落だけを普通の速さで読むやり方を勧めます。
ひとことで
速読は、全部の文を速く読むことより、読む量を減らして早く読み終える読み方です。 知りたいことに答える段落だけを普通の速さで読み、残りは見出しと段落の最初の1文で済ませます。
なぜ効くか
速く読める人がしているのは、要る所を拾うことと、知っている話を短く済ませることだからです。 一方で、目を動かす速さを鍛える訓練の効果は、本によって評価が割れています。
速く読める人は、すべての文に目を通していない
速読の本も研究を紹介する本も、速く読める人は大切そうな所を選んで読み、残りは飛ばしていると説明しています。 何を知りたいかが先に決まっていれば、どこで止まって読み、どこを飛ばすかを選べます。 本文の前に目次を読み、答えのありそうな章を決めておくのはこのためです。
読む速さは、その分野をどれだけ知っているかで変わる
知っている話は、数語を見ただけで中身の見当が付くので、速く進めます。 知らない話は、1文ずつ意味を取るしかありません。 この点も、速読の本と研究を紹介する本の両方で一致しています。
星友啓『脳が一生忘れないインプット術』で紹介されている研究では、速読の訓練を受けた人と普通の読者の両方に文章を読ませ、中身をどれだけ理解したかをテストしました。 専門家しか知らないような内容の文章では、2つのグループの成績は変わりませんでした。 一方、一般常識から中身を推し量れる文章では、訓練を受けた人のほうが上でした。
つまり、速く読める人は、拾った言葉に自分の知識を重ねて、読まなかった所を補っています。 だから、知らない分野の本は、拾い読みをしても速くなりません。 知っている量は同じ分野の本を読むほど増え、次の本が速く進むようになると、速読の本も読書術の本も書いています。
拾い読みで分かるのは、何の話かと答えのありかまで
拾い読みでは、細かい中身までは分かりません。 この点は、速読を勧める本も、その効果を疑う本も認めています。
マグ『1%読書術』が紹介している、カリフォルニア大学の研究チームが2016年に発表した速読の研究のまとめでは、読む速さを上げると、読んだ気にはなっても理解は下がるとされています。 試験や仕事で使う所ほど、拾い読みだけでは足りません。 だから、答えがありそうな段落に来たら、そこだけは普通の速さで頭から終わりまで読みます。
目の訓練やページを丸ごと見る読み方は、評価が割れている
目を速く動かす訓練、視野を広げてページを丸ごととらえる読み方、心の中で音にせずに読む練習は、勧める速読の本があります。 研究を紹介する本は、これらで理解を保ったまま速く読めることを疑っています。 本どうしで評価が割れているので、このページでは効果を言い切らず、手順にも入れません。
やり方
このページが勧めるのは、知りたいことを決めてから目次で読む章を選び、章の中では見出しと段落の頭を拾って、答えのある段落だけを普通の速さで読む流れです。
- 本を開く前に、知りたいことを1行書く。 「英単語を覚える時間を毎日どう作るか」のように、答えが1文で出そうな問いにします。
- 目次を2分読み、答えがありそうな章に鉛筆で印を付ける。 電子書籍なら、その章にしおりを付けます。
- 印の章を開き、見出しと各段落の最初の1文だけを拾って読む。 段落の最初の1文を見て、その段落に答えがありそうか、まだ知らない話かを決めます。
- 答えがありそうな段落と、知らない話の段落だけを普通の速さで読む。 もう知っている話の段落は、最初の1文で済ませて次へ進みます。
- 本を閉じて、知りたいことへの答えを1文で言う。 言えなければ、答えがありそうだった段落だけをもう一度読みます。
段落の最初の1文を拾うのは、言いたいことを段落の頭に置く書き方が、実用書や新聞で広く使われているからです。 章や段落のはじめに目を付けて読むやり方は、研究を紹介する本と速読の本の両方が勧めています。
目次を読む時間は本によって違いますが、このページでは2分にすることを勧めます。 章の見出しを一通り読み、印を付けるところまで終えられる長さだからです。 本の読み方のページで勧めている目次の時間とも、同じ2分にそろえています。
最後に本を閉じて1文で言うのは、拾い読みで分かった気になっていないかを確かめるためです。 何も見ずに思い出す練習は、アクティブリコールのページで詳しく扱っています。
うまくいかないとき
拾っても何の話か分からないときは、同じ分野の入門書を先に読む
段落の頭を拾っても意味がつながらないなら、その分野で知っている量がまだ足りません。 知らない分野では、拾い読みをしても読んでいない所を補えないからです。 先に同じ分野の入門書を1冊読み、言葉と全体の流れをつかんでから戻ると、同じ本が前より速く進みます。
目次で答えの場所が分からないときは、「はじめに」と「おわりに」を読む
「はじめに」と「おわりに」には、その本が何を言いたいか、結論は何かがまとめてあることが多いからです。 表紙や帯の言葉も手がかりになります。 本文に入る前にこれらを見るやり方は、速読の本と読書術の本の両方が勧めています。
速く読んだのに答えを言えないときは、答えの段落を普通の速さで読み直す
答えを1文で言えないなら、普通の速さで読むはずの段落まで、拾い読みで済ませています。 手順4に戻り、答えがありそうな段落を頭から終わりまで読みます。
教科書や小説を速く読みたいときは、この読み方を使わない
拾い読みは、答えを探す、中身をつかむための読み方です。 試験のために覚える教科書は、普通の速さで読んでから閉じて思い出すほうが残ります(アクティブリコール)。 小説は言葉や流れそのものを楽しむものなので、頭から順に読みます。速読の本にも、小説はゆっくり読むと書くものがあります。
よくある失敗
- 知りたいことを決めないまま、ページをぱらぱらめくる。どこで止まって読むかが決まらず、何も残りません。
- 何の話か分からないうちに、先へ先へと目を進める。文字の上を目が滑るだけで、結局最初から読み直すことになります。
- 拾い読みした本を、細部まで読んだつもりになる。拾い読みで分かるのは、何の話かと答えのありかまでです。
- 基礎を知らない分野の専門書で、拾い読みを試す。知らない話は拾っても補えないので、速くなりません。
- 全部の章を同じ速さで読む。印の章と知らない話に時間を使い、知っている話は最初の1文で進みます。