テスト前に教科書の太字を何度も唱えたのに、翌週にはもう出てこない。 唱えるだけでは、新しい事実が、自分の知っていることとつながらないまま置かれているからです。 このページでは、1節を読んで分かったら、覚えたい事実に「なぜ」と問い、教科書を見ずに知っていることを使って答え、確かめてから閉じて説明するやり方を勧めます。

ひとことで

精緻化は、新しく学んだ事実に「なぜそうなるのか」と問い、すでに知っていることを使って答えることで、2つをつなげて覚える方法です。 言葉としては「細かく詳しくする」という意味ですが、勉強法では、覚える事実に理由や関連を付け足すことを指します。

そのまま覚えた新しい事実はほかとつながらないが、精緻化では「なぜ」と問うことで新しい事実を知っていることにつなぐことを示す図
精緻化は、新しい事実を「なぜ」で知っていることにつなぐ

語呂合わせや、場面を思い浮かべて覚えるやり方まで精緻化に含める本もあります。 このページでは、研究を紹介する本が効果を確かめている、「なぜ」「どのように」と自分に問い、自分で答える形に絞ります。 この形は精緻的質問と呼ばれます。

なぜ効くか

理由でつないだ事実は思い出す手がかりが増え、答えようとすると分かっていない所が見つかるからです。 ただ、効果の強さは、閉じて思い出す練習ほどはっきりとは確かめられていません。

ただ唱えるより、知っていることとつなぐほうが長く残る

同じ語を何度もくり返して覚えるやり方は、維持リハーサルと呼ばれます。 勉強法と記憶の本の多くは、これは少しのあいだ覚えておくには役立っても、長く残すには向かないと説明しています。 一方で、新しい事実を自分の知識や経験と結びつけて覚えるやり方は精緻化リハーサルと呼ばれ、こちらのほうが長く残るとされています。

そのまま覚えた事実は思い出す入口が事実そのもの1つだけだが、なぜでつないだ事実は理由、前に習ったこと、自分の経験のどこからでもたどれることを示す図
つながりが増えると、思い出す入口が増える

そのまま覚えた事実は、その事実自体を思い出せなければ出てきません。 理由や前に習ったこととつながっていれば、そのどれかを手がかりに、たどって取り出せます。

「なぜ」に答えながら読んだ学生は、読み返した学生より少し点が上だった

安川康介『科学的根拠に基づく最高の勉強法』と、ワインスタインらの『認知心理学者が教える最適の学習法』は、どちらも生物学を学ぶ大学生およそ300人を対象にした研究を紹介しています。 文章を「なぜそうなるのか」という問いに答えながら読む組と、読み返すだけの組に分けて、あとでテストをした研究です。 差は大きくありませんでしたが、問いに答えた組のほうが成績は上でした。

つまり、同じ時間を使うなら、読み返す時間の一部を、問いに答える時間に替える価値があります。

答えようとすると、分かっていない所が見つかる

「なぜ」に答えられない所は、読んだのに分かっていなかった所です。 犬塚美輪『読めば分かるは当たり前?』とワインスタインらの本は、読みながら自分に説明すると理解が深まるかを調べた、心理学者のチィらの研究を紹介しています。 この研究では、文章を一文ずつ読んだら自分で説明し直した人は、ただよく読んだ人より、中身の理解を問う問題でよくできました。

効果は思い出す練習ほど強くなく、基礎を知らない分野では効きにくい

安川の本は、精緻化の効果を、閉じて思い出す練習や日をあけた復習より一段低く評価した報告を紹介しています。 理由の1つは、その分野の基礎知識が少ない人では「なぜ」に答えられず、効果が出にくいことです。 背景知識が少ないと効きにくいことは、ワインスタインらの本も研究を挙げて書いています。 ボーザー『Learn Better』も、知らない分野で「なぜ」と問われると答えに詰まり、調べることになると書いています。 だから、1節を読んで分かった後に使い、閉じて思い出す練習とつなげます。

やり方

このページが勧めるのは、1節を読んで分かったら覚えたい事実に「なぜ」と問い、見ずに答え、確かめて直し、最後に閉じて理由ごと説明する流れです。

1節を読んで分かった所で止める、覚えたい事実になぜと問う、見ずになぜならで答える、教科書で確かめて直す、閉じて理由ごと説明する、そして翌日と1週間後に同じ問いに答える流れを示す図
その日の5つと、日をあけた2回
  1. 1節を読み、書いてあることが分かった所で止める。 まだ分からない所で問いを始めても、答えが出ません。
  2. 覚えたい事実に印を付け、ノートに「なぜ」「どのように」の問いを書く。 太字の語、公式、出来事が目印です。
  3. 教科書を見ずに、知っていることを使って「なぜなら」で答える。 前に習ったこと、自分の経験、ほかの教科の知識を使い、短い文で書きます。
  4. 教科書で答えを確かめ、違っていたら直す。 答えられなかった問いは、教科書や資料で調べてから、自分の言葉で書きます。
  5. 教科書とノートを閉じ、事実を理由ごと声に出して説明する。 翌日と1週間後に、同じ問いへもう一度見ずに答えます。

歴史なら出来事の目的を、数学なら公式の形の理由を問う

歴史の教科書に「江戸幕府は大名に参勤交代を命じた」とあれば、「なぜ命じたのか」と問います。 知っていることから「大名にお金を使わせて、逆らう力を弱めるため」と答えてから、教科書で確かめます。 確かめると、参勤交代は大名が将軍に仕えることを示すきまりで、行き来の費用が大名の大きな負担になった、と分かります。 最初の答えは「目的」と「その結果」が混ざっていたので、「目的は将軍に仕えることを示すため、費用の負担はその結果」と分けて書き直します。

数学で「三角形の面積は、底辺×高さ÷2」を覚えるなら、「なぜ2で割るのか」と問います。 答えは、すでに知っている平行四辺形の面積を使えば出てきます。 同じ三角形を2つ合わせると平行四辺形になり、その面積が底辺×高さだからです。

閉じて思い出し、日をあけて答え直すところまでで1回分

安川の本は、精緻化を、閉じて思い出す練習と日をあけた復習に加えて取り入れる方法として紹介しています。 何も見ずに理由ごと説明すると記憶に残りやすいと書く本も、複数あります。 手順の5で閉じて説明するのが思い出す練習で、翌日と1週間後に答え直すのが日をあけた復習です。

精緻化で分かった事実に理由をつなぎ、アクティブリコールで閉じて理由ごと思い出し、分散学習で日をあけてくり返し思い出すという順番を示す図
理由をつなぐ、閉じて思い出す、日をあけてくり返す

日をあける間隔は本によって違いますが、このページではアクティブリコールのページと同じ「翌日」と「1週間後」にそろえます。 その後の間隔は、分散学習のページで決め方を説明しています。

うまくいかないとき

「なぜ」に何も答えられないときは、前の節に戻るか答えを調べる

答えがまったく出ないなら、その分野で知っていることがまだ足りません。 前の節や、同じ単元の基本の説明に戻ってから、もう一度問います。 それでも出なければ、教科書や資料で答えを調べ、自分の言葉に直してノートに書きます。

なぜに答えられるならなぜならで書き、答えられないなら前の節に戻るか答えを調べて自分の言葉で書き、どちらも教科書で確かめることを示す図
答えられないときは、戻るか調べる

答えが合っているか分からないときは、確かめてから覚える

自分で考えた答えが間違っていると、間違った理由ごと覚えてしまいます。 ワインスタインらの本は、小学生と中学生が科学の事実を「なぜ」の問いに答えながら学んだ研究を紹介しています。 この研究では、問いに十分に正しく答えられた場合に限って、成績が良くなっていました。 答えを書いたら、覚える前に教科書で確かめます。

理由を問いにくい事実で手が止まるときは、くり返して覚えてよい

英単語の綴りや細かい数字のように、「なぜ」を問いにくい事実もあります。 意味でつなげにくいものは、くり返して覚えることもある、と書く勉強法の本もあります。 そうした事実は、閉じて書き出すアクティブリコールで覚えます。

答えが教科書の言い回しのままになるときは、友だちに話す言葉に直す

教科書の文をそのまま答えに書くと、自分の知っていることとつながりません。 目の前の友だちに「これはね、なぜかというと」と話すつもりで、ふだん使う言葉に言い換えます。

よくある失敗

  • 教科書の文をノートに写して、理由を考えたつもりになる。写すだけでは、自分の知識とつながりません。
  • まだ分かっていない節で「なぜ」を始める。答えが出ず、時間だけが過ぎます。
  • 自分で考えた答えを、確かめないまま覚える。間違った理由が残ります。
  • 理由を考えただけで終わり、閉じて思い出さない。翌日と1週間後に、見ずに答え直します。
  • 太字の語を何度も唱えて覚えようとする。唱える回数を増やす代わりに、問いを1つ足します。

関連する方法と悩み

  • アクティブリコール:閉じて白い紙に書き出し、理由ごと思い出せるか確かめる。
  • 分散学習:翌日と1週間後の後、どの間隔で答え直すかを決める。
  • マインドマップ:1つの事実の理由をつなぐ代わりに、章全体の項目のつながりを描き出す。
  • ノートのまとめ方:ノートの左に「なぜ」の問い、右に答えを書けば、隠して答える練習に使える。
  • 効率のいい勉強法:勉強時間を増やす前に、読み返す時間を思い出す時間に替える。