色ペンで教科書の内容をきれいなマインドマップにしたのに、1週間後には中身を思い出せない。 教科書を見ながら描く作業は、写す作業に近く、頭から取り出す練習になっていないからです。 このページでは、教科書を一度読んだら閉じ、白い紙の中心から1本の枝に1語ずつ描き出し、翌日と1週間後に白紙から描き直すことを勧めます。

ひとことで

マインドマップは、紙の中心にテーマを書き、そこから枝を放射状に伸ばして、1本の枝に1語ずつ載せていく図のノートです。 中心から出る太い枝には見出しにあたる大きな分類を、その先の細い枝には細かい事柄を書きます。 イギリスのトニー・ブザンが考えた方法です。

紙の中心に光合成と書き、太い枝に材料・場所・できる物・必要の見出しを、細い枝に二酸化炭素・水・葉緑体・でんぷん・酸素・光を1本に1語ずつ書いたマインドマップの例
中心にテーマ、太い枝に見出し、細い枝に1語

なぜ効くか

知識が枝でつながると思い出す糸口が増え、1語に絞るときに要点を自分で選ぶことになるからです。 ただし、教科書を見ながら描くだけでは効果が弱いことも、研究で分かっています。

枝でつながった知識は、1語から芋づる式に思い出せる

知識は、ほかの知識と結び付いた形で記憶されます。 東大家庭教師友の会の本は、多くの情報と結び付けた知識ほど思い出しやすいと説明し、マインドマップをその結び付けの方法の一つに挙げています。 伊藤真『大事なことだけ覚える技術』も、図やマインドマップにしておくと、思い出すときの糸口がつかみやすいと書いています。

上の図なら、「材料」の枝を思い出せば、その先の「二酸化炭素」と「水」も一緒に出てきます。 参考書の何ページに書いてあったかは忘れても、マップの左上に描いたことは思い出せる、という利用者の声を紹介する本もあります。

1本に1語と決めると、要点を自分で選ぶことになる

1本の枝に載せられるのは1語だけです。 そのため描く人は、文章の中から後で思い出す手がかりになる語を選び、どの枝の先に置くかを決めなければなりません。

この選ぶ作業は、内容が分かっていないとできません。 資格試験にマインドマップを使う人の例として、丸写しではマップにならず、意味を分かっていないとどの枝に描くか決められない、と紹介する本があります。 描きながら迷う所は、まだ理解が浅い所です。

教科書を見ながら描くだけでは、思い出す練習に負ける

安川康介『科学的根拠に基づく最高の勉強法』が紹介している研究では、大学生80人が動物についての科学の文章を4つのやり方で勉強しました。 そのうちの2つが、文章を見ながら25分かけて概念マップ(言葉どうしを線で結んで関係を表す図)を作るやり方と、文章を読んでから何も見ずに思い出して書き出すやり方です。 1週間後のテストで点が高かったのは、思い出して書き出したほうでした。

概念マップは、マインドマップとは描き方の決まりが違います。 ただ、教材を見ながら図にまとめる点は同じです。 この研究は、粂原圭太郎、望月俊孝、永野裕之の本やワインスタインらの本も紹介しており、どの本でも思い出したほうが上でした。

教科書を見ながらマインドマップを描き写すより、教科書を閉じて頭から取り出して描くほうが、1週間後のテストの成績が高いことを示す概念図
同じマップでも、見て描くか閉じて描くかで残り方が違う(数値のない概念図)

だから、マインドマップを覚えるために使うなら、教科書を閉じて描きます。 閉じて描けば、マップを作る作業が、そのまま何も見ずに思い出す練習(アクティブリコール)になります。 描けなかった枝は、まだ覚えていない所を教えてくれます。

やり方

このページが勧めるのは、教科書の1節を読んだら閉じて白い紙に描き出し、教科書で足りない語を足し、翌日と1週間後に白紙から描き直す流れです。

その日に教科書の1節を読み、閉じて中心にテーマを書き、太い枝に見出し、細い枝に覚えた語を1語ずつ描き、教科書を開いて足りない語を足して×を付け、翌日と1週間後に白紙から描き直す流れを示す図
その日の5段階と、日をあけた描き直し
  1. 教科書の1節を読み、見出しと太字を確かめる。 1回の時間は15分を目安にします。
  2. 教科書を閉じ、無地の紙を横向きに置いて、中心にテーマを書く。 テーマは節の題です。丸で囲めば、絵は描かなくて構いません。
  3. 中心から太い枝を伸ばし、見出しにあたる大きな分類を1語ずつ書く。 教科書の小見出しにあたる語です。
  4. 太い枝の先に細い枝を足し、覚えていることを1本に1語ずつ書く。 枝はすべてつなげ、離れた枝どうしの関係は矢印で結びます。
  5. 描けなくなったら教科書を開き、足りなかった語を書き足して、横にペンで「×」を書く。 ×の付いた語が、まだ覚えていない所です。
  6. 翌日と1週間後に、教科書を見ずに白い紙へ同じマップを描き直す。 描き終えたら、5と同じように教科書で確かめます。

1回の時間を15分にしたのは、ブザンの本が10〜20分を挙げ、斎藤直子『世界一の記憶術』が紹介するイギリスの学校でも、歴史の章をおよそ15分でマップにしているからです。 描き直す日は、アクティブリコールのページと同じく、翌日と1週間後を最初の値にします。 日をあけて何度か思い出すやり方を分散学習と呼び、その後の間隔は分散学習のページで決め方を説明しています。

太い枝ごとにペンの色を変えると、どの話がどの位置にあったかを色でも思い出せる、と複数の本が勧めています。 ただ、色はなくても始められます。 黒のペン1本と裏紙でもよい、という本もあります。

うまくいかないとき

中心から枝が出ないときは、教科書の見出しを太い枝にする

最初に何を太い枝にするかで手が止まるなら、その節の小見出しをそのまま太い枝に書きます。 ブザンは、太い枝に載せる語を本の章の見出しにたとえています。 見出しが無い所は、「いつ」「どこで」「誰が」「なぜ」のような問いの語を太い枝にしても構いません。

1語にできないときは、文を語に分けて別々の枝にする

1本の枝に文を書くと、その先に枝を伸ばしにくくなります。 文の中の語を1つずつ別の枝に分ければ、それぞれの語の先に、新しい語をつなげられます。

1本の枝に葉緑体で光からでんぷんを作るという文を載せるとその先に枝を伸ばしにくいが、葉緑体・光・でんぷんの3本に1語ずつ分けると、でんぷんの先にヨウ素液の枝を足せることを示す図
1語ずつ分けると、語の先に枝を足せる

1本1語は、慣れるまで窮屈に感じやすい決まりです。 載せる語は名詞でも動詞でも構いません。 文を見たら、後で思い出す手がかりになりそうな語から順に、1本ずつ枝にします。

枝が片寄るときは、薄い枝の所を読み直す

描き終えたマップを眺め、枝の少ない所を探します。 紙の一部に枝が片寄ったマップは、内容をあまり理解していないことが一目で分かる、と斎藤の本は書いています。 薄い枝の所だけ教科書を読み直し、翌日の描き直しで枝が増えたかを確かめます。

きれいに描けないときは、描き直しで整える

描き方に気を取られると、思い出すほうに頭が回りにくくなります。 ごちゃごちゃのマップは失敗ではなく、後で描き直せばよい、とブザンも書いています。 翌日に白紙から描き直すときに、枝の順番や分け方を直します。

時間がかかりすぎるときは、範囲を1節に絞る

マインドマップは、描くのに時間がかかります。 教科書1冊を最初から1枚にしようとすると、途中で止まり、描き直す回数が減ってしまいます。 1回の範囲は1節にして、1節ずつ描き直せたら次の節へ進みます。

よくある失敗

  • 教科書を開いたまま描き写し、きれいなマップができて満足する。見ながら描いたマップは、思い出す練習になっていません。
  • 色ペンや絵に時間をかける。絵はうまくなくてよく、色が無くても描けます。
  • 1本の枝に文を書く。その先に語をつなげられなくなります。
  • 枝を途中で切って、ばらばらに語を置く。どの語がどの見出しの下にあるかが分からなくなります。
  • 一度描いたマップを見返すだけで復習を済ませる。見返すのではなく、白紙から描き直します。

関連する方法と悩み

  • アクティブリコール:閉じて描くことの土台になる、何も見ずに思い出す練習のやり方。
  • ノートのまとめ方:授業のノートを、右を隠して答えられる形で取る方法。マインドマップ以外のノート全般はこちら。
  • 分散学習:描き直しを、1週間後の後はどの間隔で続けるか。
  • 読書ノート:教科書でなく本を読んだ後に、大事な所を選んで書き、見ずに思い出すとき。
  • 効率のいい勉強法:まとめる作業に時間を取られて、覚える時間が足りないときに。