英単語のテスト範囲を一通り見て「もう大丈夫」と思ったのに、本番では半分しか書けなかった。 勉強の量より先に、自分がどこまで分かっているかの見積もりが外れていたからです。 このページでは、問題を解く前に○△×で自信の印を付け、閉じて解いて確かめ、印と結果がずれた所へ次の勉強時間を回すやり方を勧めます。 この「見積もる、確かめる、直す」をくり返すことが、そのままメタ認知の力を伸ばす練習になります。
ひとことで
メタ認知は、自分の頭の中の状態を、一段上から見る働きです。 勉強では、自分がどこまで分かっているかを見積もって確かめ、その結果に合わせてやり方を直すことを指します。
見積もって確かめる働きはメタ認知的モニタリング、やり方を直す働きはメタ認知的コントロールと呼ばれます。 片方だけでは役に立ちません。 確かめても直さなければ同じ勉強が続き、確かめずに直そうとしても、どこを直せばいいかが分からないからです。
なぜ効くか
自分の理解の見積もりは、たいてい甘い方向に外れます。 しかも人は、その外れた見積もりで次に何をするかを決めてしまいます。 ただ、見積もりの精度は練習で上がります。
読み返した直後の「分かった」は当てにならない
教科書を読み返した直後や、解けなかった問題の解説を読んだ直後は、内容がすらすら頭に入るので分かった気がします。 実際には、何も見ずに答えられる状態にはなっていません。
安川康介『科学的根拠に基づく最高の勉強法』と、ワインスタインらの『認知心理学者が教える最適の学習法』は、別々の研究で同じ結果を紹介しています。 どちらも大学生を、繰り返し読む組と何も見ずに思い出す練習をする組などに分け、あとのテストの出来を予想させました。 繰り返し読んだ組のほうが自信を持っていましたが、1週間後のテストでは思い出す練習をした組のほうが上でした。
見積もりの外れ方は、成績によっても違います。 榎本博明『勉強ができる子は何が違うのか』が紹介している研究では、大学生をテストの成績で5つの組に分け、予想した点と実際の点を比べました。 いちばん上の組はほぼ予想どおりの点を取り、いちばん下の組は76%を予想して実際は45%でした。
「もう大丈夫」と思った所は、もう確かめない
見積もりが外れて困るのは、次の行動がその見積もりで決まるからです。 「まだ覚えていない」と思えばもう一度確かめますが、「もう大丈夫」と思えば勉強を終えます。 その結果、自信があった所ほど穴が残ります。
だからこのページでは、自信があったのに解けなかった所を、いちばん先に直す場所にします。
見積もる力は、くり返すと上がる
メタ認知の力は、生まれつきの頭の良さと同じか、それ以上に成績を左右するという研究を、複数の本が紹介しています。 そして多くの本が、この力は練習で伸びると書いています。
榎本の本が紹介している研究では、問題を注意深く読んだかを自分に問い、何点取れたかを見積もる練習をした人たちは、成績が上がり、予想と実際の点のずれも小さくなりました。 犬塚美輪『読めば分かるは当たり前?』が紹介している研究では、矛盾のある文章に気づかなかった小学3年生が、「おかしな所があるかもしれない」と前もって言われると矛盾を見つけられました。 確かめようと構えるだけでも、見積もりの働きは変わります。
やり方
このページが勧めるのは、始める前に書き出し、印を付けてから解き、ずれた所から次を始め、1日の終わりに3行書く流れです。
- 始める前の3分で、今日の範囲について知っていることと知らないことを書き出す。 見出しや問題を眺めて「これは説明できる」「これは聞いたこともない」と分けます。正しく書けなくて構いません。
- 区切りごとに、確かめる前に○△×を付ける。 英単語なら1語ずつ、問題集なら1問ずつ、教科書なら見出しごとです。○は自信あり、△はあやふや、×は分からない。迷ったら△にします。
- 閉じて解き、答え合わせをする。 教科書を閉じて書き出すか、問題を解きます。確かめ方はアクティブリコールと同じです。
- 印と結果を比べ、○なのに解けなかった所を赤ペンで丸く囲む。 この赤丸が、見積もりのずれです。
- 次の勉強は、赤丸と×から始める。 ○で解けた所は飛ばします。△や×なのに解けた所は、たまたま当たったかもしれないので翌日にもう一度解きます。△や×で解けなかった所は、読み直してから解き直します。
- 1日の終わりの5分で、3行だけ書く。 見積もりが外れた所、試したやり方が効いたかどうか、明日の最初にやる1つ、の3つです。
印と結果の組み合わせは4つあり、それぞれ次にすることが決まっています。
始める前と1日の終わりにかける時間は本によって違いますが、このページでは続けやすさを優先して、3分と5分から始めることを勧めます。書くことが増えてきたら、延ばして構いません。 印を3段階にするのは、迷った問題を○に混ぜず、△として分けて拾えるからです。
試験まで日があるなら、範囲ごとの見積もりで日数を配る
試験の範囲が広いときは、範囲ごとに「今どれくらい分かっているか」を割合で書き出します。 割合の低い範囲ほど、試験までの日数を多く回します。 日数の割り振り方は勉強計画の立て方で説明しています。
テストが返ってきたら、予想した点と比べる
テストや模試の前には、取れそうな点数を見積もってノートに書いておきます。 返ってきたら、予想した点と実際の点の差、どこを間違えたか、なぜ間違えたか、次の準備で何を変えるかを書きます。 予想と結果の差が縮んでいけば、見積もる力が上がっているしるしです。
うまくいかないとき
全部に○を付けてしまうときは、解説を見る前に印を付ける
解説を一度でも読むと、それだけで分かった気になります。 印は必ず、解く前か書き出す前に付けます。 ○にするのは、何も見ずに人に説明できそうなときだけにします。
何が分からないのか分からないときは、見出しを問いに書き換える
範囲の中身が見えないと、×を付ける場所も見つかりません。 始める前の3分で、見出しを「〜とは何か」「なぜ〜なのか」という問いに書き換え、答えられそうかどうかで印を付けます。 それでも見当がつかなければ、ファインマンテクニックのように、知らない人に教えるつもりで書き出します。詰まった所が、分かっていない所です。
×が減らないときは、量を増やす前にやり方を替える
同じ範囲で何日も×が残るなら、勉強の量より、やり方が合っていない可能性があります。 読んで覚えていたなら図にする、用語を覚えていたなら身近な例を考える、1人で解いていたなら人に説明する、というように、やり方を1つ替えます。 1日の終わりの3行に「試したやり方が効いたか」を入れるのは、この切り替えを決めるためです。
赤丸が多くて落ち込むときは、試験の前に穴が見つかったと考える
自信があったのに解けないと、がっかりします。 ただ、赤丸は試験の前に見つかった穴で、直せばそのまま点になる場所です。 自分なりに答えを出して間違えた所は、正しい答えを確かめると記憶に残りやすいと書く本もあります。
振り返りが続かないときは、明日の最初の1つだけ書く
3行が負担なら、明日の最初にやる1つだけを書きます。 翌日はそこから始め、できなかったら、なぜできなかったかを1行書き足します。
よくある失敗
- 解説を読んでから○△×を付ける。答えを見た後は、誰でも分かった気になります。
- 読み返して見覚えがあることを、○の理由にする。○は、何も見ずに答えられたときだけです。
- 印を付けるだけで、次の勉強の順番を変えない。確かめた結果で順番を変えて、はじめて点につながります。
- 解けなかった理由を「頭が悪いから」で片づける。問題文の読み違いか、用語を覚えていないか、解き方を知らないかまで書きます。
- 振り返りを「よく頑張った」で終える。明日の最初にやる1つを、「◯ページの問3を解き直す」のように動詞で書きます。
関連する方法と悩み
- アクティブリコール:印を付けたあとの「閉じて確かめる」を詳しく。
- ファインマンテクニック:教えるつもりで書き出し、分かっていない所を見つける。
- 分散学習:翌日に解き直した後、どの間隔で解き直すかを決める。
- 勉強計画の立て方:範囲ごとの見積もりを、試験までの日数の割り振りに使う。
- 効率のいい勉強法:時間を増やす前に、勉強のやり方を替える。