理科の教科書で光合成の節を読み、分かったと思った。 ところが弟に「光合成って何?」と聞かれると、2文目で言葉に詰まる。 読み返しているあいだは、分かっていない所が目に入らないからです。 このページでは、用語や仕組みを1つ選び、教科書を閉じて、その科目を習っていない人に教えるつもりで簡単な言葉で書き出し、詰まった所だけ教科書で確かめてから、はじめから書き直すやり方を勧めます。
ひとことで
ファインマンテクニックは、学んだことを、知らない人に教えるつもりで簡単な言葉で説明し、説明に詰まった所を教材で埋める方法です。 名前は、アメリカの物理学者リチャード・ファインマンにちなみます。
その分野を初めて学ぶ大学1年生に向けて講義できるかどうかで、本当に分かっているかどうかが分かる。 ファインマンがそう考えていたという話は、複数の本に出てきます。 ただ、手順そのものはファインマン本人が書き残したものではない、とする本もあります。 手順の中身は、人に教えるつもりで説明することを勧める多くの勉強法の本と重なります。
なぜ効くか
教えるつもりで学ぶと内容を自分の言葉で整理し直すことになり、説明に詰まった所が、分かっていない所として目に見えるからです。 ただ、ファインマンテクニックという手順そのものを確かめた研究は少ない、とする本もあります。
あとで教えるつもりで学んだ人は、テストのつもりの人より成績が上だった
勉強法と学習の本3冊が、心理学者のネストイコらが行った同じ実験を紹介しています(ボーザー『Learn Better』、堀田秀吾『絶対忘れない勉強法』、ワインスタインらの『認知心理学者が教える最適の学習法』)。 文章を学ぶ人を、あとで人に教えると伝えた組と、あとでテストを受けると伝えた組に分け、その後でテストをした実験です。 教えるつもりで学んだ組のほうが、成績は上でした。
どちらの組も、実際には誰にも教えていません。 つまり、本当の相手がいなくても、教えるつもりで学ぶだけで効き目があります。 めろん著『勉強法BEST100』も、別の研究で同じ向きの結果を紹介しています。
説明に詰まった所が、分かっていない所
読み返しているあいだは、どの文も分かった気がします。 ところが、習っていない人に説明しようとすると、言葉が出てこない所や、専門用語を言い換えられない所で手が止まります。 勉強法の本の多くは、人に説明できない所は自分でも分かっていない所だと書いています。
問題は解けるのに、後輩に説明しようとしたらうまくいかなかった、という体験を書く本もあります。 解けることと説明できることの間には、もう一段の理解があるということです。
何も見ずに書くので、思い出す練習も兼ねる
教科書を閉じて書き出すので、そのぶん頭から取り出す練習にもなります。 教科書を閉じて、覚えていることを何も見ずに思い出す練習は、アクティブリコールと呼ばれます。 その効果は、アクティブリコールのページで説明しています。
やり方
用語を1つ選び、閉じて知らない人向けに書き出し、詰まった所に印を付け、印の所だけ確かめて、新しい紙ではじめから書き直します。
- 紙の一番上に、説明したい用語や仕組みを1つ書く。 「光合成」「てこの原理」「鎌倉幕府のしくみ」のように、教科書の太字1つ分にします。
- 教科書を閉じ、その科目を習っていない人に教えるつもりで、簡単な言葉で説明を書き出す。 相手は小学生や家族を思い浮かべます。小声で言いながら書いてもかまいません。
- 詰まった所、専門用語のまま書いた所、理由が言えなかった所に印を付ける。 印の所が、まだ分かっていない所です。
- 印の所だけ教科書に戻って確かめ、身近な物での例えや、ふだんの言葉での言い換えを考える。 節を全部読み直す必要はありません。
- 新しい紙で、はじめから書き直す。 詰まらずに最後まで書けたら、その日は終わりです。翌日、もう一度何も見ずに書きます。
光合成なら、「葉緑体」と「二酸化炭素の入り口」で詰まる
中学の理科で光合成を習った後、紙の一番上に「光合成」と書きます。 小学生に話すつもりで「植物が日光を使って養分を作ること。葉緑体で、水と二酸化炭素から……」と書き進めると、「葉緑体」を言い換えられません。 二酸化炭素がどこから植物に入るのかも書けず、ここで手が止まります。
この2か所に印を付け、教科書で確かめます。 葉緑体は植物の細胞の中にある緑色の小さな粒で、二酸化炭素は葉の表面にある小さなすきまから取り入れる、と分かります。 新しい紙では「葉の細胞には緑色の小さな粒がたくさんある。植物はその粒で、日光の力を使って、根から吸った水と、葉のすきまから入れた二酸化炭素から養分を作る。そのとき酸素が出る」と書き直します。
相手は想像でよく、話せる人がいれば質問をもらう
本当の相手がいなくても、教えるつもりで書くだけでかまいません。 家族や友だちに説明できる機会があれば、分かりにくい所を質問してもらいます。 質問に答えられなかった所も、印を付ける所です。
翌日にもう一度書き、その後は日をあけて続ける
時間を空けて、もう一度何も見ずに説明するよう勧める本もあります。 空ける日数は本に書かれていないので、このページではアクティブリコールのページと同じ「翌日」にそろえます。 翌日の次にいつ書き直すかは、日をあけて何度も思い出す分散学習のページで決め方を説明しています。
うまくいかないとき
詰まり方によって、戻る先が違います。
書き始められないときは、その節を読み直してから閉じる
最初の1文も出てこないなら、説明の材料がまだ頭に入っていません。 その用語が出てくる節を読み直し、教科書を閉じてから、もう一度書きます。
専門用語を使わないと書けないときは、その語の意味を確かめて例える
専門用語のまま書いた所は、その語の意味を自分では言えていない所です。 教科書でその語の意味を確かめ、身近な物での例えか、ふだんの言葉に置き換えます。 小学生が知っている物に置き換えられたら、その語は分かっています。
理由が言えないときは、「なぜ」と問い、答える
「〜だから」が書けない所は、事実だけを覚えて、理由をつかんでいない所です。 その事実に「なぜそうなるのか」と問い、知っていることを使って答えます。 問いの立て方は、精緻化のページで説明しています。
合っているか分からないときは、教科書と1文ずつ見比べる
書いた説明を教科書と1文ずつ見比べ、違う所を直します。 話せる人がいれば、説明を聞いてもらって質問をもらいます。
相手を思い浮かべにくいときは、録音して聞き返す
1つの用語の説明を声に出して録音し、聞き返します。 聞き返すと、言い淀んだ所や、専門用語のまま話した所が分かります。
よくある失敗
- 教科書の文を写して、説明したつもりになる。写した文は、自分の言葉になっていません。
- 教科書を開いたまま書く。見ながら書くと、どこで詰まるかが分かりません。
- 専門用語を並べて書き、分かっているように見せる。習っていない人に伝わらない所が、分かっていない所です。
- 詰まった所を飛ばして、最後まで書いたことにする。印を付けて、教科書に戻ります。
- 章全体を一度に説明しようとする。1回に書くのは、用語や仕組み1つです。
- 1回書けたら終える。翌日に、何も見ずにもう一度書きます。
関連する方法と悩み
読んだ後に使う方法は、扱う範囲とすることがそれぞれ違います。